ナウシカ誕生のとんでもないエピソード
新しいKindle本を漁っていると、大変興味深い本に出会った。日本のアニメ界の両巨頭、高畑勲氏と宮崎駿氏のエピソードがふんだんに散りばめられた本書である。著者はスタジオジブリの映画プロデューサー・鈴木敏夫氏である。こうなると面白く無い訳がないではないか。
最初にナウシカのエピソードが披露されるのだが、冒頭の見出しにびっくりする。こんな感じだ。
風の谷のナウシカ “賭け”で負けてナウシカは生まれた
“賭け”・・・。
どういうこと???
子どもから大人まで楽しめる名作の誕生に、博打が関係していたというエピソードが披露されるのだ。
決してウケ狙いのテキトーな話ではない。鈴木氏が実話として回想している。
今でこそ名作の誉れ高いナウシカであるが、当時は映画化ができるかどうか怪しかった。鈴木氏が企画を出したところで、数字が取れるかどうか見通しが立たなければ、徳間書店もなかなか映画化に動いてくれない。この局面を打開するには、応援団長を誰か見つけなければならないという訳だ。
当時の出版社は、社会に適応しないはみ出し者の集まりだったらしい。社会人がまず身につける教養が博打であり、給料日には有り金全部ぶっ込んで、すっからかんになる者が沢山いたという。
鈴木氏が応援団長として目をつけた和田さんという方に、鈴木氏とパートナーが五万円ずつ負けようぜ、そうしたら動いてくれるだろうという目論見をつけたのだ。その為にサイコロの目が思うように出せるように必死で鍛えたというのだから恐れ入る。このサイコロ博打の努力なくては、あの名作が生まれなかったというのだ。
いきなり濃いエピソードのネタバレで、もう後が楽しめないだろうと怒ることなかれ。安心してほしい。これでまだ最初から4パーセントの部分だ。
ページをめくると、あの名作のエピソードがこれでもかというほど披露される。1200円(Kindle版)と新書としてはお値段お高めだが、映画を一本観るよりリーズナブルに、映画より面白いエピソードが楽しめるのなら安いものではないか。
宮崎駿の著作は、メカのイラスト集が本人もかなり楽しんでいて良い感じである。