夫人の波乱の半生記
デヴィ夫人の婚活論と聞いて、いつもお茶の間で見るテレビのイメージで興味本位に手を出したが、これがいい意味で裏切られた。
華やかな装いの陰には、大変な苦労があったのだ。
幼少期には空襲を避けて地方へ疎開したが、そこにも容赦なく魔の手が延びる。ある日艦載機の攻撃から逃れようと必死の思いで一家が竹やぶへ飛び込むと、
『来るなと言ったのに何で入って来るんだ!』
と容赦なく罵声が浴びせられる。食料もなく空腹が続き、肩身がせまい生活は、今の煌びやかな姿からは想像がつかないものだ。
終戦を迎え、ようやく東京へ戻ってきても、一家の経済状況が厳しいのには変わりがない。学校へ入る段になっても、母の手作りのセーラー服を着て入学式に臨んだ自分の周りには、きれいなピンクのドレスを着た女の子が。当然、先生はそっちの子を贔屓する。
この描写を見て、久しぶりにアニメの小公女セーラを思い出したのは全く関係がない(笑)。
当時成績がトップクラスだった夫人を、周りは当然進学するものと思って見ていたが、経済的に困窮する一家を救う為に選んだのは就職という道であった。
このように、本書の前半部分は結構悲惨な描写が続く。しかし、夫人の様子に悲観したところは見当たらない。とにかく前向きなのである。婚活論は中身を読んでのお楽しみということで、ここに前向きな夫人の言葉を引用しておこう。
わたくしが今の立場にあるのを「大統領との結婚があったからだ」と勘違いされる方もいらっしゃいますが、自分の人生は自分で切り開くもの。これはこの当時からわたくしが持ち合わせていた〝自分で未来を切り開くパワー〟。他力本願やなりゆきだけでは、人生は開拓できません。そこをみなさまにもぜひ肝に銘じていただきたいのです。
【選ばれる女におなりなさい デヴィ夫人の婚活論より】