“アーバンサバイバル入門”  ミドリガメを鍋にする!! (服部文祥 デコ 2017-05-01) 

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ムカデの記憶

夏の夜に自家の寝室で寝ていると、ふとなんとも言えない気配を感じることがあった。そうっと部屋の灯りを点けると、壁に一匹のムカデがいた。もちろん、刺されてはいけないので、申し訳ないが退治させてもらった。

この話を学校でクラスメートに話しても理解は得られなかったが、私と同じく家の近くに山がある友人は「それ、わかる!」と相槌を打ってくれた。この友人との共通項は、身近に自然があり、常に虫などの生き物を目にする機会があったことだろうか。

サバイバル生活

服部文祥氏は、食料を極力現地調達する、「サバイバル登山」の実践者であるが、その氏が横浜に家を買い、そこでの生活における日常を紹介したのが本書である。

横浜での暮らしとサバイバルは一瞬頭の中で結びつかないが、それは本書を読み進めると納得する。ニワトリを飼って卵を産ませるまでは
まあアリかなと思わせるが、それだけならその辺に良くある話で終わってしまう。私が驚いたのは、その想像以上の食生活にあった。

亀って、食べるの!?

前に、鶏に卵を産ませるということは書いたが、ページを読み進めると、”みんなが食べれば外来種問題は解決する”という一文が現れる。
氏は通称ミドリガメ、正式名称ミシシッピアカミミガメを捌いて鍋にするというのだ。

ミドリガメなんて、縁日で買ってきてペットとして飼育するものだと思っていたが、このファミリーはそれを普通に食卓に乗せるのだ。それも、圧倒的に美味く、超高級地鶏(もっとも、氏は食べたことがないようだが)の味だと思うらしい。

五右衛門風呂の思い出

亀を食べるのは私には難しいと思ったが、幼い頃から山が身近にあった私としては共感する部分もあった。昔、実家の風呂は五右衛門風呂であったので、山から切り出した丸太を切って薪を作った。ノコで引いて斧で割ることを、危ないからと言って止めることなくさせてくれた。薪に着火して、風呂を沸かすまでの手順も祖父が皆教えてくれた。

現代の世の中は風呂を沸かすのも調理するのも、電気で大抵は賄える。子どもは火の起こし方を知らない。自然が遠くなり、虫に触れる機会も少なくなった。

ムカデの気配を感じ、その姿に怯えながら夜眠る生活は今はない。
刺されて痛い思いをするのは嫌であるが、便利になった反面、色々なことを教えてくれる自然と触れ合う機会が減ったのは不幸であるかも知れない。私の懐かしい思い出を蘇らせてくれることが本書にはある。ここまで極端な生活はなかなか難しいかも知れないが、久しぶりに実家へ行って焚き火をしたくなった。

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