GP CAR STORY Vol. 41 McLaren MP4/6 マクラーレンホンダ 最後の輝き

セナとホンダ、1991年の思い出

アイルトン・セナが最後のタイトルを獲得した時の愛機がこのMP4/6だ。

開幕4連勝、その中には悲願の母国ブラジルグランプリ優勝も含まれる。

ギアが次々壊れていき、最後は6速しか残っていない中で渾身のドライビングで挙げた勝利だ。

セナのタイトル獲得には常に傍らにホンダエンジンがあった。

MP4/6に搭載されていたのは、ホンダの思いが結実したV12エンジンである。

強烈なパフォーマンスで数々の勝利を手にしたホンダエンジン。

ただ、それに頼って勝利を得られる時代は終わろうとしていた。

セナに、「ナンバーワンのエンジン作るよ」と力強いバックアップをしてくれた本田宗一郎

がこの世を去り、空力などトータルパッケージで迫るマンセルとウイリアムズFW14が輝き

を見せ始めていた。

舞台は移って、決戦の地鈴鹿。

驚異的なタイムでポールポジションを奪取したゲルハルト・ベルガーがスタートから逃げ、

追いすがるマンセルをセナが巧みにブロックする。

マンセルがレース中盤の1コーナーでセナの乱気流に巻き込まれコースアウト。

古舘伊知郎の、「マンセルここで鈴鹿終わり!!」に呼応する、

今宮純さんの、「一年が終わったんです。」の言葉はずっしり重く響いた。

逃げるベルガーのエンジンにエキゾーストトラブル。

セナが迫り、追い抜く。

「先に出た方がそのまま行くんじゃなかったか?」

ペースの上がらないベルガーに疑念と焦りが見える。

「俺が王者だ!」と言わんばかりに快調なペースで飛ばすセナ。

満員の鈴鹿は割れんばかりの大歓声。

途中、この年で引退の中嶋悟がコースアウトする悲しい場面もあったが、

もう誰もがセナの優勝を疑うことなく時間が過ぎてゆく。

このまま終わるかと思われた最終ラップのシケインで、突如セナがスローダウン。

これまでのサポートに感謝すべく、セナが僚友ベルガーに勝利をプレゼントしたのだ。

無論、ベルガーは素直に喜べなかったとのちに告白しているのだが。

ウイニングランの途中で、2人の青年がコースに乱入し、セナにブラジル国旗を差し出した。

「あっ!」と思った。

もちろん今では許されない行為だが。、危険であると言うのは無粋である。

古き良き時代の名残、とでも言おうか。

表彰台で歓喜のシャンパンファイトを行うセナ。

傍らに複雑な表情のベルガー。

3位パトレーゼ。今は脇役だが、翌年の大暴れに備えて牙を研ぐウイリアムズチーム。

89年、90年と衝撃のクラッシュでタイトルが確定しただけに、解説の今宮さんもこの光景に

涙した。

もう今宮さんもセナもこの世を去って久しいが、この本を読むとまるで昨日のことのよう

に、テレビの前で熱狂した場面が蘇るのである。