春は新生活のシーズンで、新たに免許を取ったドライバーが車を選び出す時期だ。
若者のクルマ離れが進んでいると言われても、クルマに憧れる人はいるし、地方では一家に数台クルマを所有することも珍しくない。
本書の著者、加藤ひろゆき氏は、元ハリウッド俳優で不動産投資家という、大変異色の経歴を持つ。
これまでに不動産投資の本を数多く世に送り出されているが、とにかく文章がユニークなのだ。
「しかし、メルセデスに乗ってガソリンスタンドに行けば、若い店員が全速力で駆け寄ってきて、丁寧に窓を磨きながら、かっこいいですね、と話しかけてくる。羨望の眼差しでメルセデスを見つめる店員に、このクルマ、いくらだと思う? 中古車だけど。と質問すると、 「200万円か300万円くらいですか?」と答える。 「惜しい、もう少し安く買っている。50万円」と恥らいながら耳元でささやき、耳たぶにそっと息を吹きかける。想像していた価格とのギャップに、目が点になって、のけぞっていた。」(『激安高級中古車のススメ』(加藤 ひろゆき 著)より)
「耳たぶにそっと息を吹きかける」は、氏がおそらく“多少大げさに表現シテいる”のだと思うが、本業の不動産についての著作にはもっと笑える絶妙な文章が散りばめられている。
氏が不動産物件を買い付ける際の有名な言葉である、「鬼のような指値」も記されている。機会があれば一読されることをオススメする。
「メルセデスで街を走ると、人々は優しく接してくれる。右折や車線変更がスムーズだ。ウインカーを挙げると、周りのクルマが、気を遣って、勝手に道を譲ってくれるのだ。 ところが、朽ち果てたボロボロの軽自動車に乗っていると、真面目に運転していても、いわれのない差別を受ける。例えば、車線変更の時に、3秒前にウインカーを上げても、右斜め後方のクルマが加速して、わざと入れてくれない。あるいは、NAの非力な軽自動車で、アクセルを全開にして頑張って加速してもスピードが上がらず、後続のクルマがパッシングをしながらアオってくる。この類のイヤガラセをしてくる人は、何故か真面目くさったつとめ人が多い。仕事のストレスが溜まっているのだろうか? 家庭では良き父、良き夫であるかと思うと、残念だ」(『激安高級中古車のススメ』(加藤 ひろゆき 著)より)
この部分は激しく同意する。私も同じような目にあったことがあるのだ。某メーカーのヤンチャな顔のミニバンに多い。本当に残念だ。
これからクルマを購入される方もそうでない方も、著者の文章の面白さを一度体験して頂きたい。
そして、数多くのクルマのオーディションを実施して、自分だけの愛車に巡り会い、楽しい思い出づくりをしてほしい。
「人間の大きさは、支払った金額の大きさではない。 人間のスケールの大きさを、モノに対して支払った金額で計っている人もいる。お金を多く支払えることは素晴らしいことだ。しかし、買ったクルマの金額自慢や、キャバレーで支払った金額自慢をされても、コメントに困る。ある程度の生活ができたら、面白い友達と愉快な会話を楽しむほうが、人生が楽しい。自分を表現したければ、芸能人か作家になるほうがいい。激安中古車マニアの世界では、いいマシンを安く購入する人間が、評価される。」(『激安高級中古車のススメ』(加藤 ひろゆき 著)より